相続人調査の必要性とその方法
相続が発生した際、相続人を調査し、すべての相続人を明らかにする必要があります。
遺産の分配方法の協議に相続人全員の同意が必要になるほか、相続税額の計算時に相続人の人数を把握していなければいけないためです。
この記事では、相続人を調査する必要性と、調査の方法について解説します。
相続について
亡くなった方の財産を引き継ぐことが相続です。
遺言書がある場合には、基本的に遺言書の通りに相続します。
遺言書がない場合には、民法によって定められた法定相続人が、民法のルールに従って相続を行います。
法定相続人とは
亡くなった方の配偶者と、一定の血族が法定相続人となります。
事実婚の相手や離婚した元配偶者などは、法定相続人にはなりません。
ただし元配偶者との間に生まれた子や、養子縁組や認知した子は法定相続人に含まれます。
また、亡くなった方の子がすでに他界している場合、孫(すでに他界している子の子)が代わりに法定相続人となります。
法定相続人には順位があります。
亡くなった方に配偶者や子がいる場合には、配偶者や子が法定相続人になります。
配偶者や子がいない場合には亡くなった方の親が、親もいない場合には亡くなった方の兄弟姉妹が法定相続人になります。
遺産分割協議
遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方について協議を行います。
この時、相続人全員の同意があれば、法定相続分通りの分け方をしなくてもかまいません。
遺言書がある場合でも、相続人全員の同意があれば、遺言書に従わず協議によって分割することも可能です。
協議により決定した内容は、遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書には相続人全員の署名と、実印の押印が必要です。
相続人の調査
相続人の調査を行わずに遺産分割協議を始めてしまうと、協議終了後などに他の相続人の存在が発覚し、トラブルになることがあります。
たとえ故人に結婚歴がなくても、子どもを認知していたり養子縁組していたりすることがあるためです。
相続人の調査を行うことで、認知した子の存在に初めて気づくケースも少なくありません。
相続人調査の必要性
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。
一部の相続人のみで行った協議は無効となり、新たに相続人全員で協議しなおさなければいけません。
また相続税を計算する際、法定相続人の人数によって控除できる金額が決まります。
そのため、たとえ遺産分割協議を行わない場合でも、相続人の調査は正しく行う必要があります。
さらに遺産分割協議によって遺産の分け方を決定した場合、相続税の申告や不動産の相続登記をする際に、遺産分割協議書の提出を求められます。
相続税の申告や相続登記には期限があるため、速やかに相続人を調査する必要があります。
相続人の調査方法
故人の戸籍をたどることで相続人を調査できます。
戸籍には婚姻や離婚など、個人の身分変動が記載されています。
たとえば認知した子がいる場合、戸籍の身分事項欄に、認知した子の名前や認知日が記されます。
ただし、子を認知したあとに本籍地を移すなどして新たな戸籍を作ると、新たな戸籍には以前の戸籍に記載されていた認知の事項が記載されなくなります。
そのため、亡くなった時点の戸籍だけでは、相続人全員を特定できません。
すべての相続人を明らかにするには、亡くなった時点の戸籍から、出生時の戸籍までたどる必要があります。
本籍地を移したり結婚や離婚による異動があったりした場合、以前の戸籍から異動した旨が記載されます。
ひとつ前の戸籍が把握できたら、今度はその戸籍の請求を行います。
これを繰り返し、出生時の戸籍までたどっていきます。
戸籍の取得方法
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求することで取得できます。
請求は、郵送や窓口での申請が可能です。
申請の際には手数料のほか、請求者の本人確認書類と印鑑が必要になります。
手数料は自治体によって異なりますが、おおむね450円程度です。
故人の戸籍を請求できるのは配偶者や直系の親族です。
そのほかの代理人が請求する場合には、委任状が必要になります。
郵送で請求する場合、申請書に身分証と手数料分の郵便定額小為替を同封して請求します。
返信用の封筒も、切手を貼った状態で同封してください。
郵送で請求した場合、戸籍の受け取りまで10日ほどかかる可能性があります。
戸籍の異動が多い場合には、すべての戸籍をたどるまでに多くの時間がかかることもあります。
まとめ
この記事では相続人調査の必要性と、その方法を解説しました。
遺産の分割方法を決めるには、相続人全員での協議が必要になります。
そのほか、相続税の控除額を計算する際にも相続人の調査が必要です。
相続人の調査には、故人の戸籍を出生時から死亡時まで連続で取得する必要があります。
戸籍の異動が多い場合には、調査に時間がかかることもあります。
相続人の調査に関するお悩みは弁護士までご相談ください。